「あの、お怪我は──」
「大丈夫か?」
え──⋯?
ぶつかってしまった相手に声をかけようとした瞬間、わたしの声が遮られたかと思った矢先、
懐かしい声が頭上から降ってきた。
顔を上げると、イヤホンを耳にしている男子が一人、目を丸くしてわたしを見下ろしていた。
「いま足捻ったろ。立てるか?」
どうして、彼がここにいるの───⋯⋯?
「秋妃?」
なにも反応しないわたしの前にしゃがむと、心配してか顔を覗き込んでくる彼。
もう⋯
二度とわたしの名前を呼んでくれないと思っていたのに⋯。
「え、あ⋯⋯大丈夫よ。ありが───痛っ」
思わぬ顔の近さに驚いてしまい、顔が少しずつ熱くなる。
照れ隠しで立ち上がろうとしたら左足首に痛みが走った。
中途半端な体勢だったわたしは、痛みにたえきれずバランスを崩した。
「⋯っ、あぶね」
バランスを崩したわたしを、カラダで受けとめて、支えてくれた。
男らしいカラダつきに、懐かしい匂いに、ドクン⋯と胸が高鳴る。
「⋯⋯わりい、足痛めたな。保健室行くぞ」
彼───最上優絆は眉を顰めつつ申し訳なさそうに、わたしを支えるようにして歩きだした。
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