「岩波くん⋯?」
振り返ると、「よっ!」と手をあげて、ニコッと笑う岩波くんが立っていた。
「こんなところでなにしてるの?⋯って買い物帰りか」
近づいてきてわたしの手荷物を見るなり、自己完結した様子の岩波くん。
「ええ、そうなの。 岩波くんはなにしているの?」
「俺? 俺は暇だったからこの辺ぶらついてた。 優絆はなんか予定があるって言ってたし」
予定?
「そうなの? 優絆ならいまウチにいるわよ?」
「え?! 予定って秋妃ちゃん家(ち)に転がり込むことかよ!」
びっくりした表情を浮かべる岩波くん。
転がり込むって大袈裟ね。
「いまからウチくる? 優絆もいるから上がっていって?」
「え、いいの?」
「ええ。立派なおもてなしはできないけれど⋯」
「いいよいいよそんなの全然! じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔させてもらおうかな」
岩波くんと肩を並べて家までの道のりを歩いた。
さりげなく買った食材の入った袋を持ってくれる紳士的な行動に、岩波くんの想いが夏葉に届きますように、と素直に願った。
家に着くまでの間岩波くんは、ずーっと優絆の話ばかりしていた。
楽しそうに笑顔で話す岩波くんを見て、よっぽど優絆のことが大好きなんだなって思った。
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