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高校に入学した春先。



体調が悪かったわたしは、保健室で薬をもらい、しばらくベッドで休ませてもらっていた。


ベッドに横になって目をつむっていたら、いつのまにか眠っていたらしく。





ベッドを覆うカーテンを開けて誰かが静かに入ってきた気配を感じ、深く眠っていなかったせいで遠退いていた意識が静かに呼び戻された。




秋妃(あき)




誰かがそっと、切なげな声で、わたしの名前をつむいだ。



誰──…?



眠すぎて目が開けられないわたしは、相手が誰なのか確認することができなくて。



「秋妃」




ベッドが軋む音が聞こえた数秒後。


───わたしの唇に、そっとなにかが重なった。





なにが触れてるの…?


でもわたし──…。


この感触、知ってる──…?





そっと唇に触れた〝なにか〟に既視感を覚えた。



優しく触れたそれは、キズつけてしまった彼の唇によく似ていた。








忘れもしない、大好きな彼の唇に──…。





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