"国"まで書いて、"語"を書こうとしたその瞬間に、それをすることは不可能になった。


人の気配なんてまるでなかった教室、急にわたしの後ろに人の気配を感じたかと思ったらすぐに、わたしの持っていたペンが奪われた。



頭上から伸びてきた手に、いとも簡単にペンは奪われてわたしはそのまま固まってしまう。取られた時に少しだけ触れた指がわかりやすく熱を持つ。



ペンを奪われたと同時に降ってきたわたしの名前を呼ぶ声が大好きで心地よくて、理咲って名前を世界でいちばん特別にするんだ。



その声のせいで、一瞬で頭が真っ白になって、わたしは金縛りにあったかのように動けない。