今年の巫女役に選ばれた女の子が捧げ物の入れられた箱を手に山道を歩いていく。神社の鳥居をくぐり、御社殿の前に箱を置いた後、村をこれからも護ってもらえるようにお祈りをし、そそくさと村へ帰って行った。

女の子の姿が神社からなくなると、御社殿の中に二人の男女が何もない空間から突然姿を見せる。サルタヒコと紫乃だ。

サルタヒコは上機嫌に笑い、捧げ物の入った箱を開ける。そして、中に入れられていたマカロンを見て「紫乃」と声をかける。

「可愛らしいお菓子が入っているよ。お茶の時間に二人で食べようか。……もう二百年経つんだね。色々な新しい食べ物が生まれるのも当然か」

藤色の華やかな着物を着た紫乃は、ただ俯いていた。紫乃の両手には手錠がかけられており、手錠についた鎖をサルタヒコがしっかりと握っている。紫乃が逃げ出すことはできない。

「可愛い紫乃。来年もこうしてお祝いしよう。私たちは永遠に一緒だ」

手錠の鎖を軽く引っ張られ、紫乃の体はサルタヒコの腕の中に閉じ込められる。紫乃は抵抗することはない。彼に抵抗しても無駄だとこの二百年で思い知らされたからだ。

生きることも、死ぬことも、紫乃は自由に決めることはできない。