帰り道を奪われて

雪はもう降ってはいないとはいえ、昨日積もった雪はまだ溶けることなく残っている。足が思うように進まない。だが、足を止めてしまえば二度と村に戻れないような気がした。

道は雪で白く染まり、同じような景色が永遠のように続いている。そんな中、恐怖という感情だけで紫乃は前を見て進んでいた。

「早く村に帰らなきゃ!」

足が疲れから止まりそうになるたびに、紫乃はそう自分に言い聞かせた。吐き出した息は白く、一瞬にして消えていく。

「ハァ……ハァ……」

昨日、吹雪の中を歩いたように息が上がっていく。それでも必死に足を動かしていたのだが、あることに気付く。

「何で、村に全然着かないの!?」

昨日は強い風と雪のせいで全く進むことができず、雪の中に倒れてしまった。だが今は雪など降っておらず、積もった雪で少しずつしか進めなかったとしても一時間ほどすれば村は見えてくるはずだ。だが、紫乃がどれほど歩いても全く村は見えてこない。