「じゃあ、帰るか…」

「そうだね…」

拓人のひと言で、三人はゆっくりと重い腰を上げた。

会話もあまりないまま、見慣れた同じ道を三人並んで歩く帰り道。

さっき思いに耽ったことが、なんだかずっと頭から離れないでいる私。

そのせいで私は隣の二人の姿が気になってしまい、なんだか無性にちらちらと見てしまう。

合わせた歩幅の一歩一歩。

それと一緒に幸せが過ぎ去っていくような感じがして、なんだか不思議に私の心がざわめいてる。

なんか、いい方法ないかなぁ…。

私は、少しでも時間が止まればいいな、って思ってた。

途中、ちょうど近くの道端で屋台の金魚すくいを見つけた私は、あんまり自慢できない特技を披露。

「えへへ、すごいでしょ?」

すくい上げた三匹の金魚を、記念にと言って露に差し出した。

驚いた表情でそのプレゼントを受け取った露は、透明な水の中をくるくると回る可愛らしい金魚をじっと見つめる。

不意に、吐息のような声を漏らした露。

「いっしょ…」

その言葉を聞いて、私は思わず息を飲んだ。

…そっか…。

…そうだね。

私たちと一緒。

いつまでも離れない。

ずっと、ずっと一緒の三匹。

「赤い綺麗なのが沙耶…。黒いのが拓人…」

「いちばん小さいのが私だね…」って言って、私に顔を向けた露。

それは今までにないくらいに、最高のボロ泣きだった。

あぁ…よかった…。

私と一緒で、露も幸せなんだね…。

その姿を見た私は、堪らずぎゅうぎゅうに露を抱きしめた。

半分は、自分の涙を隠すために…。

だって私は露みたいに綺麗じゃないし、それに強くもないから…。