声が聞こえた。
(……えっ……)
状況が理解できない露。
だけど、空耳なんかじゃない。
妄想なんかでもない。
確かに聞こえた。
それに、この声…。
忘れられるわけがない…。
そばでいつも聞いていた、とても優しくて、どこか懐かしい声。
(…え…どうして…)
わけもわからず、心が定まらない。
露はうずくまったまま、表情さえ固まってしまっていた。
(言ったじゃん、露。ずーーーっと離れないからね、って)
今度は違う声だった。
露はその声に、思わず涙が溢れた。
(…うぅ…っ…)
嬉しさのあまり、弾けそうなほどの思いを込めて力いっぱいにうずくまる露。
もう会えないって思ってた…。
だって…。
二度と会えないと思ってたから…。
すると誰かが、露の頭に優しく触れた。
(一人で寂しかったんだろ?)
今度は誰かが、露の肩に触れた。
(また三人一緒だね、露)
露が泣き顔をあげると、そこには笑顔の拓人と沙耶がいた。
(タクトぉ…さやぁ…)
泣きながら露は二人を交互に見つめる。
どうしてここにいるの…。
…いや。
そんなことは聞かなくていい。
二人の優しさだけが、私はうれしい…。
あのときの笑顔で、二人に応えた露。
今なら心から言える…。
(ありがとう、タクト…沙耶)
ふたりとも、大好きだよ…。
end

