(…二人には、たくさん迷惑ばっかりかけちゃったのに…)


口をつぐんで、涙をこらえる。


(…ダメだなぁ…わたし…)


もう彼らに、感謝の言葉を伝えることはできない。

だから、せめてもの償い。

生き残った世界で、二人の人生が幸せであって欲しい。

それは露の本心でもあり、ただの強がりでもあった。


(…きっと私のことなんか、すぐに忘れちゃうんだろうな…)


寂しさに侵される露。

二人がいた世界が幸せで…それが当たり前だったからこそ、孤独になった今が辛くて意識がひねくれる。


(…違う…あの二人は忘れてなんかくれないよ、きっと…)


そう。

二人の優しさは、露が一番理解していた。

いつも優しかった二人。

だけどもう、いない。


(これから私、どうしたらいいんだろ…)


初めての不安がよぎる露。

死後への不安。

苦しみから解き放たれたはずなのに、生きていた頃のような不安。


(どうなっちゃうのかな…私…)


一人きりの苦しみ。

誰とも繋がり合えない寂しさ。

当たり前のように、そばにあった小さな温もりが恋しい。


(やっぱりダメだよ…)


露はまた、震えるように泣いた。


(二人がいないと、私ダメだよぉ…)


弱いくせに。


(…ふたりに…)


なにもできないくせに。


(…会いたいよぉ…)


それなのに。

今だって、捨てられた仔猫のように泣くことしかできない。

露は命を失ってから初めて、顔を歪ませて泣くことを覚えた。