(…しかたないよ…)


うつむきながら、露は思った。


(二人がそばにいてくれたから、私…生きていられたんだし…)


昔からずっと、いつも露のことを大事に守ってくれた拓人。


(幸せだったなぁ…)


露が寂しくないように、たくさん話しかけてくれた沙耶。


(私なんかと友達になってくれて、私みたいなのを彼女にまでしてくれた…)


露の瞳には、あるはずもない涙がじわりと滲み出る。


(大好きな拓人…大好きな沙耶…)


うつむいた露の瞳から、涙が一滴だけ溢れる。


(二人にはちゃんと、ありがとう…って言いたかった…)


後悔だけが露の胸に残る。

ありがとうを伝えられなかった悲しみに、悔しくて震えて涙する露。


(言いた…かったよぉ…)