「なんだよ、露…こんなときに…」

二人は嫌だった。

このまま露を失ってしまうことを。

そしてそれをただ近くにいながら、彼女の死を理不尽にも受け入れなければならないことを。

「ふざけ…ないでよ、露…。まだ…まだダメだからね…つゆ…」

露はうっすらと浮かべた笑顔のまま。

二人は悔しかった。

自分がどんな犠牲になってでも、誰かの幸せから目を逸らそうとしない、強くてか弱い少女がいる世界を失うことが。

「つゅ…俺をひとりにする…な…。露がいないと…つゆがいな…いと…」

「私もだよぉ…。ずっと…ずっと露と一緒が…いいよぉ…」

露はうっすらと浮かべた笑顔のまま。

二人は許せなかった。

愛情と優しさに満ち溢れていながらも、それを理解されずに消え果て、ゆっくりと忘れられていくことが。

「…露…頼むよ…たのむから…」

二人が今まで生きてきた世界で、露の存在はかけがえのないもの。

たくさんの思い出が、二人の脳裏に駆け巡る。

ひとつひとつは他愛もないとても小さなものだけれど、彼女と過ごした時間や、彼女と暮らした日々。

それはまるで、綺麗な宝物のようだった。