そして、現在に至る。

「……」

息を潜める三人。

ただ意識の薄まってゆく露に、寄り添うことしかできない沙耶と拓人。

このままじゃ、露が危ない。

一刻も早く病院へ連れて行って、治療してもらわなければ…。

きっと、命の危険だってあるはず…。

なのに…どうしよう…。

光がわずかに漏れる納屋の隙間に、視線だけを向けた沙耶。

外からは不気味なうめき声が絶え間なく聞こえてくる。

恐らくは、死人が徘徊しているのだろう。

ここから出ることさえも困難で、状況は最悪としか思えない。

早くしなければ…。

そうしないと露が…

露が…いなくなってしまう…。

まるで動くことのない露を、ただひたすらに抱えることしかできない沙耶。

露の赤く染まった手を、力いっぱい握り締めることしかできない拓人。

二人には困惑と焦りが見え始めていた。