親友が見せた涙

「逃げるぞ!」

拓人の力強い声のお陰で我に返った二人は、彼の言葉にすがるように、今来た道を戻ろうと急いで振り返った。

その瞬間。

「…あっ…」

三人は背後から近づいていた死人に気づくことができず、露が肩を鷲掴みに押さえつけられた。

そして死人は、欲望の赴くままに、露の首筋あたりを噛みちぎった。

「つっ…露っ!」

拓人は突然のことに叫び声を上げ、思わず勢いに任せ死人に殴りかかった。

露から引き剥がされ、倒れ込んだ死人。

拓人は湧き上がる怒りと恐怖に任せ、死人の頭を何度も何度も踏みつける。

「露!大丈夫、しっかりして!」

「…ぁ…あ……」

言葉を失っている露。

彼女は震え上がる手で傷口を押さえようとするが、あまりの痛みとショックで身体が硬直し動いてくれない。