親友が見せた涙

きっと、これは現実。

疑おうが、信じられまいが、受け入れられまいが、これはきっと現実。

今もなお遠くから聞こえてくる、頭の中や腹の奥に響いてくる悲痛な誰かの叫び声。

風に流れて香ってくる、むせかえりそうな生臭い血と肉の匂い。

そして、少しずつゆっくりとこちらに進んでくるゾンビの群れ。

夢であれば、それで構わない。

目が覚めた時に、安心するだけ。

だがもし現実なら、逃げるしかない。

いつもであれば平穏を絵に書いたような、見慣れた商店街の風景。

だからこそ、この地獄絵図のように変わった状況がただ飲み込めずにいる。

今は…今はとにかく逃げるべきだ。

二人と一緒に…二人を連れて…。

拓人は考え抜いた末、意を決して行動にでた。