親友が見せた涙

「……」

露だけではない。

三人の声と思考は、動かすべきであろう足と共に止まっていた。

あれは、人ではない。

そう…。

確か、こんな光景…。

三人は今までに一度だけ、それと似たようなものを見たことあった。

だが、いくらなんでも現実にそんなことは絶対に有り得ない。

だってあれは、映像で見る精巧な作り物やメイクであって、物語も誰かが考えたフィクションのはず。

−−ゾンビ。

露が極度に嫌がって、結局は一度しか見たことはなかったが、映画の中の世界でしか存在しないはずの化け物。

いるはずもない、死人の群れ。

起こるべきはずのない、目の前に広がる惨状。

それでも死人の群れは、三人の姿を捉えたのだろう。彼らがいる方向へ一人…また一人と向きを変え、ゆっくりと近づき始めた。

今の状況にもはや言葉を失い、思考がまるで追いつかずに立ち尽くしたままの三人。

その中で、初めに動いたのは拓人だった。