親友が見せた涙

「ねぇ…なにあれ…」

言葉を溢した沙耶だけではない。

ここにいる三人全員が、目の前に広がっている光景を疑った。

商店街の通りには、叫び声を上げながら必死の形相で逃げ惑う人が見える。

そして、それを数人が追う様子。

それは、

人が…人を襲っている光景だった。

襲いかかっている人は凶器などを振るうわけではなく、逃げる人の腕や衣服を捕まえると、躊躇うことなく人間の柔らかい肉にかじりつき、時には引きちぎり、むしり取っている。

捕まえられた人は身動きさえとれないまま、痛みと恐怖に絶叫し、削ぎ落とされた肉体からは大量の血が溢れ出している。

そして襲いかかった人は血まみれになりながらも、今もなお生きている人間の肉片を餌のように貪り食らっている。

悲痛な叫び声もやがては枯れ果て、息絶えた人間を求めるように無数に群がってゆく人たち。