親友が見せた涙

−−15時38分−−

けたたましいアラーム音が日本全国に鳴り響き、前代未聞の緊急避難警報が全国民へ向けて発令された。

屋外へ出ることは絶対にやめて、今すぐに安全な場所へ避難してください。

避難した後は指示があるまで、決して危険な行動は慎んでください。

ニュースからの情報は一様だった。

しかし警報が発令された理由や、現在どのような状況にあるのか、詳しい情報が一切更新されない。

人々は、少しずつ不安を募らせる。

そして、警報からわずか一時間後。

今まさに、何らかの異常事態がこの日本で起きていることを、全ての人々が確信する事象が発生した。

それは、電力の供給停止。

街からは照明が消え、誰もが手にしている情報端末の通信が全て途絶え、交通機関の大半が突如として不能となった。

人々は「足」を失い、「耳」を失った。

そして、次に奪われるのは「目」。

それは確実だった。

少しずつ夕陽に染まり、これから先に待ち構えるのは、明かりのない夜。

わずかな月明かりに照らされただけの、暗闇に等しい何もない世界。

しかし、これはまだ始まりに過ぎなかった。

絶望に打ちひしがる…

この国の「終わり」への、始まり…。