露が変わっていることといえば、もう一つ。

彼女が口にする「ありがとう」という言葉には、一ミリの感情さえもない。

もちろん感情がないわけじゃない。

冷たく見える表情の奥には、俺が今まで出会ってきた誰よりも、たくさんの深い感情を彼女は抱えている。

道端に倒れた動物の死骸を見つけると、涙に濡れながら抱えて立ちすくむ彼女。

制服が汚れるなんて、まるで厭わない。

だけと彼女は、なにもできない。

なにもしてあげられないのに、彼女は泥だらけになりながら、ただ一人で泣いて立ち尽くす。

「…露…」

沙耶はそんな露だからこそ、愛おしくてほっとけないんだと思う。

だけど、それは俺も同じだ…。

「どっか、埋めてやるか…?」

「うん…」

ただひたすらに純粋で優しい彼女だからこそ、その弱さを助けてあげなくてはいけない気持ちになる。