露の教室に行った時、クラスの女子に呼び止められ「沙耶と付き合ってるの?」と何度か聞かれたことがある。

そのたびに俺は笑いながら、最大限の不味い顔で応えてやった。

「あー、ないよ全然…」

顔こそ笑ってはいたけれど、いつも心の中は複雑だった。

だって、そうだろう?

今も露に会いにきた俺を呼び止めて、話に引っ張り込んだ女子たち。

知らないわけがない。

俺が露と一緒にいる姿をあれだけ見てきたはずなのに、それをまるで知らないかのような…無視するような話の内容。

女子ってのは、残酷だな…。

そう思いながら、俺は少し腹が立っていた。

露や俺のことを何も知らないくせに、まるで二人の関係までも無責任に否定されているみたいで…。

俺のせいで、露を傷つけてしまっているように思えてならなかった…。

「……」

しかし、今は冷静になるべき。

あいにく、俺と露はクラスが違う。

今俺があまり乱暴なことをしてしまうと、今度は露に迷惑がかかってしまう可能性だってある。

だから俺は怒りをこらえた。

心を殺して、笑顔を作るしかなかった…。