紅葉のシーズンが近付いて宿泊の予約も多いが、夏に頑張った分の連休は取れると思う。

「優子さんにも会わなきゃいけないけど、直ぐに用事は済ませるから」

「ううん、ゆっくり会って来て。私は待ってるから。楽しみだねっ」

優子さんは東京に住んでいるらしく、東京方面に行く事が決定した。

ウキウキして舞い上がっている私に響が言いずらそうに言った。

「昨日の電話なんだけど、アレは千夏さんからで……」

「えっと、何で?」

ウキウキした気分は一気に冷めて、昨日の夜の寂しさが舞い戻った。

何故、千夏さんからなの?

響の携帯番号を知っているの?

あんな時に私を置いて行った理由が”千夏さん”?

また心にポッカリと穴が空きそうだった。

「ごめん。実はあんな状態で心配だったから、何かあった時は電話してって言ったんだ。そしたら、昨日かかってきて……」

確かに河に飛び込もうとしていた千夏さん。

でも、響が心配しなくても駿が居る訳だし。

電話は結局、湊君じゃなかったんだ。

今考えたら湊君と話す時よりも、柔らかい物言いだったもんね。

「もう、いいよ。言い訳はいいよ」

素直に黙って聞いてればいいのに話を遮って、嫌な言葉を投げかける。

昨日の私は何だったの?

ドキドキ感も寂しかった思いも、何事も無くなるような悔しい気持ち。

ヤキモチよりも、もっと深い、そう、これは深い深い嫉妬だ。

「最後まで聞いて。言い訳って思ってもいいから……」

私に向けられる響の真剣な瞳が怖くて、下を向いた。

「別に何かあって電話をかけて来た訳じゃないんだ。電話の声を聞いた時は何かあったかと思ったけど、その後直ぐにシュンが二人で話をしたいって言ってるって言われて……」