響が戻るとガサガサと紙袋から、食べ物などを取り出した。

「レストランの厨房の方がひよりの為に色々と作ってくれた」

「そうなんだ」

「うん。今日はレストランで手が足りなくて手伝いに行かされたんだ。これから帰ると言ったら、料理を持たされた」

テーブルに並べたら、全部二人前。

「二人で食べなさいとか色々言われて無理矢理、持たされたんだ」

レストランの厨房の方は皆、フレンドリーで、お節介な位の世話焼き。

堅苦しいシェフのイメージはない。

特に洗い物担当の良い歳のおばちゃん達に関しては、恋話も大好き。

誰と誰が付き合ってるとか情報が早くて、何でも知ってる情報通。

「しかも、ひよりと付き合ってるの知ってだぞ。恐ろしい奴らだな」

「奴らって……。ねぇ、何だか、ちょっとした豪華なディナー気分だね」

サラダにスープにオーベルジュで焼いている手作りパンも入っている。更にはチーズ入りオムレツと牛ヒレのカツに果物の盛り合わせまで。

「わざわざ作ってくれたんだね。本当にありがたいよね」

オーベルジュのレストランのメニューは創作フレンチがメインだ。名目上は私は体調不良だった為、私達の為にわざわざ仕事中に用意してくれた訳だが、厨房の皆さんの心遣いも嬉しかった。

「昼間に換気出来ないから、食べ物の匂いがこもるのは嫌だな。少しだけ、開けて良い?」

匂いのキツイ食べ物はないと思うが、言う通りに少しだけ窓を開けたら肌寒い。

食べ終わって、匂いが飛んだら直ぐに閉めよう。

「あっ、美奈と湊君だ!」

駐車場に向かっている二人に手を振ったけれど、暗い上に後ろ向きだから気付く訳がないか。

「美奈と湊君が居たよ。明日は休みだから、出かけるんだって」

「あぁ、旅行に行くらしいな」

一瞬、響が言葉を躊躇った気がする。

「こんな時間から? どこに行くって?」

「ビジネスホテルに予約してあって、今から出るらしい。どこかは知らない」

仲直り旅行かもしれないので邪魔にならないようにメッセージは送らないけれど、後で直接、美奈に聞こう。

「俺達も以前に言ってた旅行に行くか?」

「うんっ、行きたい。連休の申請出そうよ」