虜にさせてみて?

さっちゃんに、美奈に、響からだ。

さっちゃんからは、”王子は元気か?今から帰るっ”

何だ、コレ。さっちゃんらしい、短文なメッセージにクスッと笑ってしまう。

美奈からは、”ひより大丈夫?明日は私も湊も休みだから、終わったらすぐに出かけるね。仲直りしたよ。朝はごめんね、有難う”

仲直りしたならば、安心した。

良かった。美奈が湊君の事で泣いていたのは今回が初めてだったので正直、驚いた。

ケンカの原因は分からないままだけれど、結果的に仲直り出来たなら、それで良し。

直ぐに返事しなくては。

やっぱり、美奈と湊君には一緒に居て欲しい。

大好きな二人、並びに憧れな二人は、いつまでも幸せで居てね。

響ならは、”寮に帰ったら、おとなしく寝てろ。夕飯は食うな、待ってろ”

目茶苦茶過ぎるほどに上から目線なメッセージ。

もう少し、可愛いげのあるメールは送れなかったのだろうか?……と思いつつも、一緒に食べる夕飯は嬉しかったり。

お風呂に入って、いつでも響の所へ行けるようにしておこう。

寮のお風呂に入る準備をして部屋を出ようとドアを開けたら、事務所勤務の三枝さんが通りかかった。

「お疲れ様です。風邪で早退? ふふっ。昨日、勝手に居なくなったくせに、随分といい身分ですね。マネージャーをも動かしちゃうなんて、先輩ってば、やる事違いますよね」

クスクスと笑いながら、さりげない嫌味を言い放たれ、私は何も返さずに固まった。

「私、響さんの事、本気で狙いますから。先輩はせいぜい、駿とじゃれあってて下さいね」

”駿”

――その名前を聞いた時に、背中がゾクッと震えた。

この子はどこまで知っているんだろう?

恋仇……いや、それだけではない何かが私とあの子の間にあるハズ。

三枝さんとはレストランが忙しく、ヘルプ要請を出した時にしか、一緒に仕事をした事がない。