虜にさせてみて?

湊君が慌てて床の上の私を起こしてくれた。

「ごめんね、驚かせちゃったね。大丈夫?」

「うん、大丈夫。ありがとう」

椅子から落ちた私は、どこと無く眠気も覚めたみたい。

「居眠りなんて珍しいね? 昨日は疲れちゃった?」

そうだ、湊君にお詫びしてなかった。

あんなに迷惑かけておいて、私は自分の事ばっかりだった。

「昨日はありがとう。駿が訳の分からない行動をしてごめん。それに私も逃げられなくて……」

「んっ? ごめん、ごめん。デリカシーの無い言い方したね。何があったかはよく分からないけど、駿君は悪い人じゃないと思うよ。だって、ひよりちゃんが好きになった人だしね?」

湊君の柔らかな物言いに私はホッとした。

絶対に人の悪口を言わない湊君は、男友達として大好きで大切な存在。

湊君と一緒に居る時の美奈はキラキラしてて、沢山の女の子オーラが出てて、普段以上に可愛いの。

二人は私の憧れの存在だよ。

「それから、ごめんっ! 朝まで響を付き合せてしまって。犯人は俺なんだ」

「えっ?」

「俺が悪いんだ、全部。美奈から何も聞いてない?」

「うん、聞いてないよ? どうかしたの?」

展開が読めない。

電話の主は湊君だったなんて。

湊君ならば私は責める事なんて出来ない。

「あのさ、俺……」

湊君が何かを言いかけた時、美奈の姿が見えた。

「ひより、おはよ。湊……?」

「じゃあ、行くね。また後でね」

美奈がラウンジにやって来ると、美奈が君は美奈を見るなり、そそくさと戻ってしまった。

一体、二人の間に何が起きたの?

「あはは、実はね、昨日帰って来てから湊とケンカしたの」

美奈は空元気なのか、どこか切なげに笑った。

「珍しいね、ケンカなんて」

「うん、たいした事じゃないから大丈夫だよ。ただ、今はね、距離を置こうと思う」