差し延べてくれた手を取って起き上がり、雪を掃ってから車に乗った。

格好悪すぎだ。

車の中は芳香剤の良い香りと煙草の匂いが混ざっていた。

二つ上のお兄ちゃんの車とは違い、綺麗に掃除してある。

この時は”几帳面なんだなぁ”とただ単に思っていたけれど、それは違った。

几帳面にしていたのは、他にも女の人が乗る事があるからだと後から分かった。

「ひよりちゃん、どこまで行くの?」

「駅までです。明日から連休なんで実家に帰ろうかと思って」

ドキドキが止まらなかった。

気になる人の助手席に乗り、二人きり。

運転している駿を横目で見ながら、やっぱりカッコイイと再確認してしまったり。

「家、遠いの?」

「電車で一時間位ですけど……」

「そうか。それなら送ってあげよう」

「えぇっ? だ、大丈夫ですっ」

「実はお兄さん、暇だったりして。あ、別に捕って食おうとかしないから大丈夫だよ」

不意に向けられた笑顔に胸の鼓動が更に早くなった。

名前とバーのマスターと言う事しか知らない。

もっともっと知りたくて、欲張った。

人生、初めての告白。

「あっ、あのっ!」

「んー?」

「彼女は居ます、か?」

「ふふっ、特定な人は居ないけど」

”特定な人”=”彼女”ではなくて、”たった一人の特別な人”だった。

私がその意味に気付くのは、まだまだ先の事。

「えっと、あの、私は駿さんの事が……」

「いいよ、付き合っても。俺もひよりちゃんの事が気になってたから」

駿は私が『好き』と言う前に何を言いたいのかを気付いたらしく、告白の返事をくれた。

まさかのまさか、駿も私を気になってくれていたなんて!

その時の私は嬉し過ぎて舞い上がっていた。

「じゃあ、彼女として送ってってあげる。それなら、断る理由はないでしょ?」

「……はい」