正直な所、響はどうするかな?って思った。

下心見え見えなこの子だけれども可哀相だから、私は響に『助けてあげたらっ』て小声で言って河岸まで走った。

河原までは何本かの木が植えてあり、根っこが這い出して地面に出ている。

響が他の子に優しくする所を見たくなくて、夢中で走り出したから、私も木の根っこにつまづいて転んだ。

バケツがカランッと音を立てて、1メートル先にまで飛ぶ位、激しく転んだみたい。

まだまだ蚊とかの虫がいる季節だと思って、ジーンズにスニーカー姿のアタシだったけれどズキズキと痛い。

今日は踏んだり蹴ったり。

少しの間、立てなかったけど、痛いのを我慢してまた歩き出す。

ジーンズに血が滲んでいる感覚がする。あの子よりも土まみれの傷だらけかもしれない。

やっとの思いで河岸に着いたら、着いたで今度は会いたくない人に会ってしまった――

「いつまでも引きずってるなら、河に飛び込んで死んでやるっ」

「やめろって!」

「離してっ!」

河岸で誰かが口論していた。

よく見ると、駿と髪の長い可愛い女の子だった。

電灯に照らされて、女の子のストレートの綺麗な黒髪が揺れる。

「駿ちゃんが忘れなきゃ、何も始まらないし、誰かを傷つけるだけなんだよっ!」

「分かってる。だから、帰ろう」

「分かってない、分かってないよ!いつだって、そうやってごまかすんだからっ」

駿は他にも女の子との付き合いがあるのは知っていた。

だから、辛くて逃げ出した。

でも話が聞こえる限りは、恋愛の縺れではなさそう。

駿が引きずっている事? いや人?

忘れなければいけない何かがあるの?

――あるとしても、私は知らない何か。