虜にさせてみて?

「線香花火対決! 後片付け争奪戦! 早く落ちちゃった三人が後片付けする事にしよーよっ」

響と他の女の子達の中を堂々と割り込む美奈。

「俺、パス」

「ブーッ! パスは自動的に後片付けですっ」

逆らえない雰囲気らしく、美奈に圧倒されている響達。

「よしっ! 俺も混ざろうかな」

「わぁいっ、マネージャーもっ! じゃあ、いっせーにロウソクのから火をつけよう」

美奈が線香花火を皆に配り、一斉にロウソクから火をつけた。

「あっ!」

響が大きな声をあげたかと思ったら、真っ先に線香花火は落ちた。

それを見て思わず笑ってしまって、手が震えたらタイミングが悪く私のも落ちた。

「ざまーみろっ!」

私を見てお返しのように笑う響。

ちょっとムッとしたけれど、仲直りのチャンスが訪れそうだ。

さてと、片付けを始めなくては。

真っ先に立ち上がり、上から皆の線香花火を見下ろす。

「や〜だぁ〜、落ちちゃったぁ」

あ、今、響にベッタリだった総務の子の線香花火が落ちた。

先程、線香花火が落ちるように横に揺らしていたように見えたような気がしたが、余計な波風は立てたくないので知らないふりをする。

「響さんっ、一緒に片付けしましょう」

相変わらずの甘えた声で響に近付く。

腕を組もうとしたみたいだが、響は上手く交わしたみたい。

「ひより、こっちのバケツにも水を汲んで来た方が良いと思うけど……というか、汲んで来い。怖いなら着いて行ってやる」

バケツを私に差し出し、試すように言う響。

全く、いつになったら、理由もなく素直に隣に来れるのか。

……と、声に出して言いそうになったけど、ここでは止めておく。

これ以上、悪化させたくない。