虜にさせてみて?

あまり大きくはない打ち上げ花火を上げてる中、私は花火ではなく、ぼんやりと星を眺めていた。

響と夜空を眺めた事もあった。

夜空の星も、夏の位置から秋の位置に変わっていく。

季節が巡り巡ったとしても響とは一緒に居たいと願う。

それなのに何故、響には素直になれなくて意地を張って、下らない事で喧嘩してしまうんだろう?

それでも、響から声をかけてくれるとか、ご機嫌とってくるかな? などと考えてしまう最低な私。

響の気持ちを試してるんだ。

試さなくても充分すぎる愛情を貰っているのに。

まだ必要だって言うの?

「ひよりちゃんと響の分の線香花火だよ」

「湊くん、でも響は私となんかっ」

「響さ、横目で気にしてるんだよ、ひよりちゃんの事。心配で堪らないのに不器用だから、それ以上、入って来れないんだよ。っね?」

響には他の女の子達がベッタリと纏わり付いていた。

美奈は美奈で、他の仲間と一緒に居た。

いつの間にか、輪から外れていた私に声をかけてくれたのは湊君だった。

湊君の優しさが身に染みて、閉ざしていた心が開く。

「ちょっと、ひより。湊を取らないでよ」

「わぁっ! 美奈っ?」

二人で話していると、美奈が後から抱き着いて来た。

「ご機嫌直った? 私が余計な事言ったから……」

「ううん、違うよ。さっきはイライラしてて……」

「やっぱりヤキモチ?」

「まだ言うの?」

『おいでっ』と美奈に手を引かれて、響の元に連れて行かれた。

美奈も自分のせいで喧嘩しちゃったと思っていて、気が気じゃなかったらしい。

山とは違い、街の河原は蒸し蒸しするくらいに暑い。

これから秋が深まって、冬が来て、春が訪れる。

響とはまだ夏の景色しか、一緒に見た事がないから、日々を重ねて全部の季節を過ごしたいな。

――そう、心から思ったんだよ、それなのに……。