虜にさせてみて?

柔らかく笑うお義母さんは気品があって、優しい人柄が溢れ出ているような人。

私には到底、無理だろうけれど、お義母さんみたいな人になれたらいいなと思う。

「お待たせ致しました。ダージリンです」

「ありがとう、いただきます」

お義母さんはカップを手に取り、一口、口に含むと『響の言った通りね』と微笑んだ。

喜んでもらえて嬉しい。

朝早くはお客様も寄らないから、響のお母さんと、もう少しだけ、話す事にした。

「ひよりさん、響にスマホを返して貰えないかしら。あの子ったら、わざと置いてったみたいね。ふふっ、でも、久しぶりに響と話せて嬉しかったのよ。大きくなってからは、ゆっくり話す機会、いえ、努力が足りなかったから。

あら、いやだわ、こんな話をしてしまって。ごめんなさいね、つい……」

お義母さんは寂しそうに目を伏せると、再び、紅茶を口に含んだ。

「いえ、話して下さって嬉しいです。水野君の事、もっと知りたいですし」

お義母さんが色々話してくれて舞い上がって、つい、知りたいだなんて口にしてしまった。

お義母さんの顔に、再び、さっき消えた笑顔が戻って安心した。

「ひよりさんは素直で可愛いわね。ひよりさんが重荷にならないなら、響と一緒に居てあげて下さいね」

「重荷に感じる事はないです」

「そう? なら良かった。言いにくいんだけど、ひよりさんにお願いがあるの……」

「はい、出来る事なら何でも!」

張り切って、馬鹿みたいに大声で答えてしまった。

お願いとは何だろう?

私が叶えてあげられる事だろうか?

お義母さんは『元気ね』って、クスクスと笑ってから話してくれた。

お義母さんのお願いは、前に響にされたお願いと同じ事。

大丈夫かな、私。