「はぁっ、頭痛いかも?」

頭が痛い?

もしかしてとは思うけれど、昨日はお酒飲んでたのかな?

「昨日はお酒飲んだの?」

「少しだけ。ひよりに会いに来る前に多めに水を飲んだんだ。いつもよりは、こないだよりはマシ。話した事を覚えてるし、割れる程、痛くないから」

『こないだ』とは駿に飲まされた時の事。

アノ時の事は何も思い出せないらしい。

昨日、妙に私にベッタリとくっついていたし、
過去を話してくれたのだって、お酒の力だったのかも?

でも覚えているみたいだし、話してくれたのは自分の意志だったんだよね。

今も素直に話してくれてる。

百合子さん達に勝てなくてもいいや。

前よりも、昨日よりも、響に近付いてるだけで充分。

響が心を開いてくれている、それだけで充分だよ。

「先に仕事行くね、またラウンジでね」

響にバイバイをして、部屋に戻った。

気付けばもう7時。

響の部屋には時計がないのに気にしてなかった私も悪いけれど、もう少しで遅刻するとこだった。

急いで支度をして仕事に行かなくては。

洗顔と歯ブラシを持って、部屋の斜め前にある共同の女子専用の洗面所に向かうと、二階から美奈が降りて来た。

「おっはよ、ひより!」

バシンッと勢いよく、背中を叩かれる。

「痛っ。おはよう、美奈。朝から強く叩きすぎっ!」

「昨日、どこ行ってたの?もしかしてぇ、響君のお、部、屋?」

背中はヒリヒリしてるというのに、美奈は気にしてない。

しかも、ニヤつきながら私を見ている。

何が、『お、部、屋?』よっ! わざわざ区切って言わなくていいのに。