響が怒ってしまった。

誰にだって聞かれたくない事はあるのに、興味本位で聞いてみたくて聞いてしまった。響を傷つけて、自分も心を痛めてる私は馬鹿そのもの。

「女って過去にこだわるよな?過去なんか、どうでもよくない?」

睨みつけるような目で私を見て響が言ったけれど、何も答えられなかった。

女だけが過去を知りたいかは別として、響は過去を詮索されたくないのを確信する。

響をもっと知りたい欲が出ているが、聞いてはいけない。

百合子さんの事以上に触れてはいけない、開けてはいけない心の扉がある事を私はまだ気付かなかった。

「ごめん、嫌な言い方したよな。ごみ捨て行ってくるから」

「あっ、いーよ、私が行くよ」

「一人にして」

「……うん」

謝ってきたかと思えば、低い声で突き放された。私よりも、響は繊細で傷つきやすいんだろう。

私の恋がどうとか、そんな事よりも響には響の傷がある事を何故、もっと早く気付いてあげられなかったんだろう。

傷が何かは分からないが、深入りして傷に触ろうとしたのは確実に私だ。

「アイスカフェオーレ、ふったつー下さいな。お散歩帰りに来ちゃった」

カウンターに寄りかかり、シュンとしていると、いつの間にか、百合子さんとマスターがソファーに座っていた。

「大丈夫?響、すぐにいじけちゃうからねー、扱い大変だよねーっ」

「そうそう、いじけやすいから。でも響はね、手名付けると可愛いんだよ」

アイスカフェオーレを運んでいる最中に、私に話しかけてきた二人。

マスターが言う、可愛いは分かる気がする。

俺様な態度のくせに押され気味だと、しおらしくなったり赤くなって照れちゃうの。

「明日、響の御両親が来るの。響には内緒ね!私達はね、二泊するけど御両親は一泊なの」

「はい」