「……うわっ、何だよ、それ。もしかして優子さんの事で怒ってるなら勘違いだ」

勘違い?

「優子さんは……」

響がため息を一つついてから、「本当の母親だから」と言った。

「気が向いたら、話すから。湊や美奈ちゃんには言わないで」

「うん、分かった」

本当の?

響には響の事情があるのだろう。

それ以上は聞けない、母親を名前で呼んでる事も、家族の事も。

「ひより、もしかしてヤキモチ?」

「ち、違うもんっ!」

「ははっ、まぁ、いーけど。……で、どこに行くの?」

ドキンッ。

今の、はにかんだ笑顔は何?反則だ。

見たことがない表情に思わず、胸がときめく。

駿……、私は貴方の事を諦められるかな?

新しい恋が出来るかな?

響を好きになっていけるかな?

『好き』って言えるかな?

『愛してる』って言えるかな?

まだまだ、結論には辿りつかないけれど、自分の心は動き出したのかもしれない。

響も私も”幸せ”になれたらいいな。

その後はモヤモヤをスッキリさせたくて、気持ちの切り替えしたくて、響と近場の遊園地に来た。

「……気持ち悪い、かも。少し座りたい」

響がヨロヨロしていて面白い。

「ぷっ! 情けないなぁ。ここで待ってて、飲み物を買ってくるからね」

「はぁっ」

ベンチに座り、うなだれている響を置いてジュースを買いに行った。

ジェットコースターとか大好きな私は響を少々、引っ張り回してしまったみたい。

ジェットコースター系が苦手だった響は、限界が来たらしく乗り物酔いしたらしい。

「お待たせ、コーラとお水、どっちがいー?」

「コーラ」

気持ち悪い時は炭酸を飲むと少しはスッキリするよね? と思ってコーラとお水を買ってきた。

響は半分位飲むと私に手渡す。

「何でいつも、おまえの前だと情けなくなるのかなーっ。あーぁ」

「私だって響にだけだよ、イライラして怒るのは……」

「腹立つ答え。けど、素でいられる方が楽じゃない?」

「うん、そうだね」

話にまともに返事をしてくれて、 会話が成立していくことは私達にとっては進歩かもしれない。

いつもはケンカ越しだから。