虜にさせてみて?

最後に駿にそんな事を言われて、気持ちが揺らいで、頭の中がグジャグジャになって、やっぱり助けて欲しくて……響君に八つ当たりした。

駿の言葉が本気じゃない事も分かってる。

響君が酔っている間に出た言葉も嬉しかった。

……考えれば考えるだけ、泥沼。私が1番ズルイから、普通にしてる。

最悪すぎる、自分。

美奈に相談して心が晴れたのに、駿の一言で左右されてしまう。

大嫌いな自分。

「明日は少し遠出でもしようか?」

「え? 本気で出かけるの?」

「何それ?……じゃあ、出かけないっ」

「う、嘘だよ。出かけるから。行き先、考えとけよっ」

あれ?

やけに素直。

嘘だって言って俯いて、くるりと半回転して向こう側を向いた響君。

「それから、湊にも言ったけど”クン”付けやめろよな! 呼び捨てでいいから」

後ろ向きで言った響君に対して、

「じゃあ、また後でね。お昼に行って来ます、響」と返事をして、すれ違い様に顔を見たら……見てはいけなかったかも?

そっぽを向いてる顔は真っ赤だった。

――次の日になり、太陽がサンサンと輝いて眩しい朝。

響君……いや、響と駐車場で9時半に待ち合わせ。

まだ気まずさは残るけれど、遅刻すると怒られそうだから、なるべく早く行かなきゃと思い、10分前には向かった。

早く用意が出来たと思って居たのに、響は先に来ていて、私の車の前でスマホとにらめっこしている。

「おはよ、響。何してるの?」

「……はよ。メッセージ送ってた。ちょっと待ってて」

「うん、分かった」

そういえば、響の電話番号もメッセージアプリのIDも連絡先は何も知らないんだよね。

「番号とID教えて」

「うん……、ほらっ」

響にお願いするとスマホを私に投げて来た。

「登録しといて」

「え? だって、携帯を他人にいじられるの嫌じゃない?」

「別に見られて困るの入ってないから」

「そう、分かった」

私はお互いの番号とメッセージアプリのIDを交換して入力した。