虜にさせてみて?

美奈に駿との事、響君との事を話した後、たわいのない話で盛り上がっていた。

久しぶりの女の子だけの夜。

泣き腫らした顔で、美奈と思いっ切り笑った。

まだまだ話していたくて、眠りたくなくて、けれど眠らないと仕事に響く時間になってた。

……そんな時だった。

湊君からの”迎えに来て”の電話。

何処かと思えば、駿のバーだった。迎えに行った先には、酔い潰れた響君

響君の寝顔を見るのは、初めてじゃないけれど、改めて見ると綺麗で整った寝顔だった。

ほろ酔い気分の湊君も寝ていたところを駿に起こされて、電話をしたらしい。

バーは二階に有る為、湊君と駿が下まで響君を運んだ――

「……おはよ」

午後13時になり、何事もなかったかのようにラウンジに響君が現れた。かなり眠そう。

「おはようございます」

寝不足だし、泣き腫らした目が嫌で、度が入っていない眼鏡をかけていた私。

「……ブッサイクだな、お前」

「うるさい」

昨日は仕事中に無視されたけれど、今日は普通に戻っていた響君。私も普通にしてなきゃ。

「……響君って、お酒弱かったんだね」

「まだ頭痛ぇんだから、うるさく言うな」

駿に聞いたら、響君は30度のカクテルを一気飲みしたらしい。

詳しくは分からないけれど一気飲みだなんて、きっと挑発されたんだよね?

私、駿に……お別れをして来たよ。

けれど、駿も響君もズルイ。愛の言葉を軽々しく言わないで。

「あっ、明日、同じ休みになってたから、どこかに連れて行け」

「”連れて行って下さい”でしょ?」

「……連れて行って下さい」

――ねぇ、響君。

酔って覚えてないだなんて、ズルイ。あんなにも私を必要としてくれたのに、私はまだ駿のしがらみから離れられない。

響君達を迎えに行った後、駿に会った。

駿にもお別れを言ったが、最後に響君のように、強く強く抱きしめられた。

『ひよりにいつも側に居て欲しい。好きだ』って――

響君にも同じ事を言われたよね?響君は忘れてしまっても私は覚えているからね。