――バシンッ。頬を叩かれて起きた。

「おいっ、起きろ! 自分の部屋に戻れ!」

響君?

あぁ、アタシは寝てしまっていたらしい。

キスした後は確か……。上手く場が繋げなくて、「オンブしてよっ」と泣き真似したんだった。

自分で仕掛けたくせに馬鹿な私。

響君は寮までオンブして連れて来てくれて、部屋が分からないから、とりあえず自分の部屋に連れて来たらしい。

オンブが心地良くて、子供みたいに寝てしまったのね……。

「ここで寝る、おやすみ……」

「寝るなよ。部屋、戻れよ。戻らないと、イタズラしてやる!」

「……好きにしていーよ?……とりあえず、寝るけど……」

男の子はこーゆー状況で二人きりだったら、押しに弱いんじゃないのかな?

ベッド占領しちゃおう。

響君、口には出さないけれど、『心の隙間を埋めて下さい』――

気付けば、あのままベッドを占領して朝まで寝ていた。

響君は床で寝ていたみたい。

「おはよう、水野響サン。何してるの?頭押さえて?」

先に起きていた響クンが何故か、頭を抱えている。

「別に何も?」

「ベッド有難う」

響君は床を見つめて、少し間を空けて、驚きの一言を言った。

「おまえ、誰とでも寝るんだな?」

え?

「服……来てるもん……」

「……した後に着たんだろ?覚えてない?おまえが誘ったんだからな……?」

――響クンの嘘。意図は分からない。

私、自慢じゃないけれど、お酒に強いし、記憶がないなんて事は一度だってない。

しかし、好都合な事を響君は言ってくれた。

抱かれてなくても、そういう事にしておこう。