虜にさせてみて?

響がシュンとの話し合い後に、湊君から聞いた事情。

自分の彼女が一晩泣き腫らしていたら、帰れなかった理由を真っ先に否定する為に言い訳に使うでしょう?

どんなに彼女が大切でも、湊君の立場が悪くならないように響からは言わなかった。

それだけ、響にとっても湊君が大切なんだろうけれど、それ以上に本当に性格が良すぎて参る。

「馬鹿って何だよ?」

「いや、性格良すぎて馬鹿だなぁって」

「意味が分かんねぇな」

そんなじゃれあいをしながら、冷めないうちに響が入れてくれたアールグレイにお砂糖を少しとミルクも入れて、クルクルとかき混ぜた。

一口、喉に流すと自然と心が落ち着きを取り戻していくのが分かる。

今度は私が、美奈を助ける番だ。

美奈が私を元気づけてくれたように、今度は私が元気づけて笑顔にさせたい。

――仕事が終わり、美奈に連絡をしたら先に上がっていて部屋に居たらしい。

寮に帰ると急いで私服に着替えて、玄関で待ち合わせをしてから車に乗り込む。

「久しぶりだね、ご飯を食べに二人で行くの」

「うん、何ヵ月ぶりかなぁ?」

私が響と出会う前までは、美奈の都合に合わせて月に一度は夜に出かけた。

響が来てからは、夏に入って稼ぎ時のせいで忙しいのもあり、更には付き合い出したのもあったので疎遠になっていた。

「ねぇ、久しぶりにお気に入りのパスタ屋さんに行かない? 確か夜は10時までだったよね?」

「うん、そうだったよね。行こう、行こう」

昼間の件もあってか、ちょっぴり、よそよそしい感じがする私達だけれども美奈が笑顔を見せてくれたから嬉しい。

いつもの心からの笑顔じゃないかもしれないが、私の為に無理してるのかもしれない。

でも悲しんでる顔は見たくないから、笑顔を見れただけでも嬉しいの。