虜にさせてみて?

「さて、どこに行こうか? 天気も良いし、行きたいとこは? あ、百合子んとこは駄目だからなっ」

「はいはい、分かってるってば!」

響に繋がれた手をブンブンと振り回し、駅まで歩く。

この繋いだ手を離したくなくて、少しだけ力を入れて握りしめる。

私も響にとって相応しい女になりたい。

見かけも大事だけれど、問題は心の中身だよね?

人に優しく、心が強くて、清くありたい。

「パパァッ!」

駅までの道のり、駆けてきたちいさな子が響にぶつかって抱き着いた。

「パパ? パパじゃないんだけど」

小さな子は女の子で、響はヒョイッと軽々しく抱っこをした。

「可愛いね、頬っぺた、プニプニ~」

何故か、響にペッタリとくっつき、抱っこされている女の子。

私が頬っぺたをプニッと指で押したら、いきなり泣いた。

「……っやぁ~! パパァ~ッ」

大泣き。

私はこんなに子供に嫌われたのは初めてかも?

ホテルでは、なつかれ過ぎて逆に大変な位なのにな。

「ごめんなさい、勝手に走り出してしまって」

そう言いながら、ママだと思われる人物が前からパタパタと駆けてくる。

「こらっ、めーよっ! おいでっ」

私達の元へ来て、女の子に手を差し伸べると、女の子は首を横に振り、「パパァ、見つけたの…」とさっきより強くしがみ着いた。

「本当にごめんなさい。パパに似てる人を見つけると、抱き着いちゃうんですよ。この子の父親、出張が多くて。今日、帰って来るからね」

「ほら、今日帰るってさ。ママが心配してるから、戻りな」

響が女の子の頭を優しく撫でると、すんなりとママの所へと戻った。

女の子のママは何度も謝り、抱き抱えて私達とは反対方向へと歩き出した。

「バイバーイッ」と手を振り、こだまする声に響も手を振り返す。

見えなくなるまで、ずっと―─

「響って子供好き?」

「嫌い、ではない。子供が産まれたら、自分と同じ運命だけはさせたくはないな」

「大丈夫だよ、響ならきっと大丈夫!」