虜にさせてみて?

諦められずに響を傷付けて前に進もうとした。

自己満足で響に近付いたのだから、ミチルさんを責める資格なんてない。それなのに―─

「私こそ、馬鹿だ。ミチルさんよりも私の方が最低だ。傷付けたのは私だって一緒だもんっ」

泣きそうになる目に力を入れて、涙を堪えながら響から離れようとすると、許しては貰えず、肩をすっぽりと抱かれた。

「お前もしつこいな、もう気にするな。だいたいにして駿の事がなかったら、今はこうして一緒にも居ないんだし巡り合わせだと思って感謝してる」

「ごめん。本当にごめん、謝り切れない」

響は本当にどうしようもない位に優しくて、それがまた自己嫌悪に陥り、心が沈む原因でもあるんだけれど、人に優しく出来るという事が心の強さだと改めて思った。

「これ以上謝ったら、いや、謝らなくてもいいか……」

響は足を止めて、軽く触れるだけのキスをした。

「……響?」

そんなに人通りが多い訳じゃないけれど、誰かに見られているようで不意打ちは恥ずかしい。

「泣き止んだ?」

余裕そうにニヤッと笑って、肩から手を降ろして再び手を繋ぐ。

この人、東京に来てから甘さ全開なんですけどっ!

不意打ちキスもこれで二回目だし。

「いつもと違って東京に来たら狼みたい」

「じゃあ、お前は子羊かよ」

ちょっとムッとしてるけれど、怒ってはなさそうだ。

自己嫌悪に陥っては、何度も何度も確かめてしまう。

それ程、大好きでもう傷付けたくないし、誰にも傷付けさせたくないの。

私も貴方に前に進まなきゃ何も始まらないという事を教わったんだよ。

これからもお互いに理解を深めあって、助けあって歩いて行けたら良いな、と切に願うよ。

ずっと、ずっと大好きだからね?

誰にも譲らないから。