虜にさせてみて?

この後に聞かされる真実が辛い。

「……といってもさ、俺が全部の国立大を落ちたら離れて行った」

「え?」

「所詮、俺の中身なんてどうでも良かったんだろ?言ってなかったかもしれないけど、俺は都内で進学率がトップクラスの男子校に通ってたんだ。アイツは、自慢できる彼氏が欲しかっただけなんだよ。その後すぐ、同じ高校の国立大受かった奴と付き合いがあったみたいだしさ」

淡々と話してくれたのは、とても嬉しい。

でもね、内容が内容だけに私は複雑。

高校時代の響は知らないけれど、きっと不器用だけど優しかったに違いない。

それなのに学歴やルックスだけで近付いて、入らなくなったら別れを告げるなんて許せない。

響も響だよ、何で傷つけられたのに平気で話せるの?

お母さんには血の繋がりもあって、複雑な事情も抱えてた。

あの人には、自分自身の欲の塊しかなかったんだよ?

時が経てば許せるの?

どこまで、お人好しなの?

まぁ、私も同じように響を利用しようとしていたので責める権利なんてあるはずはないのだけれど……。

「何で? どうして、あんな人と仲良く出来るの? 時が経てば許せるの?」

自己満足の為だけに、響を傷付けた事が許せなくて私は毒を吐いた。

まるで、自分がしようとした事をミチルさんに押し付けるかのように。

響を責めたって過去は変わらないのに、でも、モヤモヤとした気持ちのぶつけようがどこにも無くて――

響はそんな暴言に怯む事もなく、私の髪をクシャッと撫でて優しく笑う。

「優子さん、あの母親もあの子も、理由はどうであれ、同じだろ? 恨んでばかりじゃ前に進めない。それを教えてくれたのは、お前だろ?」

サラリと言い逃れて私の頭を引き寄せて、響の胸の辺りにキュッと納められる。

「心配しなくても大丈夫だから。前程、あの頃みたいに弱くないから」

響の心の中では、優子さんもあの子も、かけがいのない人だったから、完全に許しているのかもしれない。

“恨んでばかりじゃ前に進めない。それを教えてくれたのは、お前だろ?”

“あの頃みたいに弱くないから”

私は駿を諦められなかっただけだよ。 それに、どちらかといえば、優子さんやミチルさん側の人間だ。