虜にさせてみて?

翌朝、ふかふかのベッドと響の腕枕で目覚めた。

毎日、響の腕枕で眠りについていたけれど、今日は特別に感じる。

初めて、響の肌の体温に直に触れて心も満たされた夜。

サラサラの茶色の髪の毛、長い睫毛。

寝る時はいつも見てるのに、余計に愛しく思える。起こさないように、そっと髪の毛に手を通した。

「……まだ早いから」

触れた事により起こしてしまったのか、おでこに軽くチュッてキスが落ちてきて、ギュッと抱き締められる。

休みだし、チェックアウトまで時間もあるしから、もう少しだけこのまま、抱き合っているのも悪くないかも。

温もりが心地良くて、再び眠りについた。

「んっ、」

「ひより、ひよりっ。チェックアウトまで後30分だぞ」

目が覚めると、響が先に着替えていて私が寝ている横に座って居た。

「な、何で起こしてくれないの?」

ガバッと勢い良く起きると隣で「よく寝る奴」と言って笑っているし。

もうっ、意地悪なんだからっ!

いつの間にか起きて、一人だけ出かける準備をしていた響。

「俺が居たら用意しずらいだろうから、ラウンジでコーヒー飲んでるから」

ガサガサと慌立たしくキャリーバッグから着替えを出したりしている私の頭を軽く叩き、余裕綽々と部屋を出る響。

もーうっ!

気遣いは有難いけれど、それよりも早く起こして欲しかった。

本当は目覚ましをかけなかった私が一番悪いのだけれど。

ピロロ、ピロロ……。

顔を洗おうとしたら、突然の電話。内線かな?

もしかして、もう時間?

でも、まだ後20分近くはあるはずだ。

「はい」

電話に出るとフロントからで、 チェックアウトの時間が11時になったからと言われた。

響がそうしたのかな?

絶対にそうだと確信する。

しかし、響が待っているのだから早くしなくちゃ。

急いでメイクをしたり、髪をセットしたりして、響が待つラウンジに向かった。

すると、そこには響の姿はなかった。