車の中の蒸し暑さと陽射しで目が覚めた。朝日が昇り、瞬いていた星達はギラギラと輝く太陽へと変わっていた。

閉め切っていた窓を開けようと、エンジンをかけた時に隣で寝ていた彼は起きた。

「おはよ。窓開けて、クーラーかけるね」

「はよ……、ふぁあっ。遅刻決定だな、お前」

響君がスマホを取り出して時刻を見る。まるで自分は関係がないような様子で淡々と言い放った。

しまった! 今日は7時出勤だったのに、現在は7時23分。

とりあえずは電話しなきゃと思いつつ、この辺りは電波が上手く拾えないらしい事に気付く。

「電波ないみたい!」

車から降りた響君は展望台に立って景色を眺めていた。道路は車の通りが増えてきている。

車内から見た響君は背伸びをしている。

「今日、休めばお前?」

車から降りて来た私に向けた無責任な一言。

「嫌。ズル休みは嫌い。あーぁっ、今帰ったら、噂の的かもね?」

「……本当は嫌だけど、余計なの寄りつかなくて、いーんじゃない?」

それは自分に? もしかして私に?

「俺にだよ、バーカッ! 髪の毛、グジャグジャだぞ」

隣に立っていた私の髪の毛をクシャクシャッと撫でて、「帰らねぇの?」と行って車に乗り込んだ。

私は髪の毛を手ぐしで直して、心の中で「バーカッ」と言い返し車を走らせる。

冷房を効かせているにもかかわらずに助手席の窓を全開にして風にあたる響君。

何だかんだ言っても、ここでの暮らしが気に入ってきたのかもしれない。