東京駅に着くと、宿泊するホテルがある池袋まで行き、コインロッカーに荷物を預けて、電車を乗り継ぐ。

響の言うがままに着いて行くけれど、人が行き交う中、響を見失うかと思った。

「ほら、手を繋いで」

「うんっ」

行き交う人々と上手くすれ違う事が出来ずにぶつかりそうになる私に、恥ずかしげに手を差し延べる響。

私はその手をギュッと握って再び歩き出す。

なかなか外でデートも出来なかったのに、初めてのゆっくりとしたデートは煌びやかな街。

何もかも新鮮でドキドキして、甘い甘い時間。

―─のハズだったけれど、響のお母さん登場で甘い甘い時間はどこへやら。

お昼を御一緒する事になっていたが、緊張の連続だった。

優子さんが待っているからと響と向かったお店は、な、何と老舗の割烹料亭で私なんて場違いだと感じる。

ランチ時なのに、個室に通された揚げ句、待って居たのは正座した着物の女性。

私なんて普段着で行ってしまい、顔から火が出そうな程に恥ずかしい。

「はじめまして、響の実母の水野優子(みずのゆうこ)です」

「わ、私は響さんとお付き合いさせて頂いている、深澤ひよりです」

響の育てのお母さんは柔らかい雰囲気だったが、優子さんは何て言うか、女を感じる妖艶な感じ。

綺麗で響に似ているが、どこか冷たくて近寄りがたい雰囲気もある。

「響がどんなお嬢さんを連れて来るかと思って、かしこまって、こんな場所にしちゃった挙句に姉さんに着物着せられたし。はぁっ、こんなにチンチクリンなら、無理しなくても良かったわね」

溜め息をついてはクスクスと笑い出すから、私は余計に恥ずかしくなった。

確かに私は気品がある訳ではないし、特別美人でもないしスタイルもそこそこだからチンチクリン寄りだとは思うけれども面と向かって言わなくてもいいじゃない。

優子さんは足を崩し始める。