ズシリ、と重みのある私の荷物。

「まさか、ドライヤーとか持って来てないだろうな」

「そのまさかだったりして」

カチャカチャとなったせいか、毎日使っているマイナスイオンのドライヤーとヘアアイロンを持参したのがバレたみたい。

それから、退屈したら響と遊ぼうと思って買ったミニオセロ。

きっと見つかったとしたら、『置いてけ』と言われるに違いないから内緒にしとこう。

響は呆れた顔をして車に乗り込んだ。

車で駅まで向かい、新幹線に乗って東京へ。

新幹線の中の響はと言うとコーヒーを飲みながら、文庫本を読んでいる。

何を読んでるんだろうと、チラリと覗くと純文学だと本人から聞いた。

私は純文学など読まないから分からない世界。

響のルックスに文庫本。

似合わないような、知的に見えるような、何とも言えない感じ。

「何だよ」

「あっ、いや、その……」

響の姿を横から眺めて居たら、気付かれて睨まれた。

もっと会話がしたいな、なんて思ったら駄目かな?

「少しだけ、肩貸して」

「あ、うん」

私の肩に頭を寄り掛からせて、眠りの体制に入る響。

夜遅くに帰って来て、朝が早かったから眠いし、疲れているよね。

会話したいけれど響の性格上、ずっとは無理だろうし、まだまだ話す機会はゆっくりあるからまぁいいか。

響の茶色に近いサラサラな髪が、窓から差し込む光に透ける。

響の静かな寝息が間近で聞こえるし、胸が跳ね上がる。

私にだけ見せてくれる響の表情、言動、行動。

独り占めしている私は幸せ者。

東京に着いたら、どんな事が待ってるんだろう。

滅多に行かないから、ワクワクはしてるけれど不安もある。

響のお母さんにも会うんだよね。優子さんはどんな人なのだろう?

響が寝ている間に一人で色々と考えていた。