10月も下旬になり、秋も深まる頃に私と響は、晴れて連休が取れて旅行に行く事になった。

響のお母さん、優子さんが東京に住んでいるので、行き先は東京に即決。

「ひより、顔が緩んでるってば」

10月に入り、ブライダルへと移動になった美奈は打ち合わせの為にラウンジを利用したり、コーヒー等をブライダルコーナーへと運んだりする為に頻繁に訪れては話をして行く。

「だって明日が待ち遠しいんだもんっ」

「もう、すっかり響君の虜だね。駿~って泣いてたくせに」

「美奈の意地悪!」

「あはは、冗談だってば。ひよりと響君はつかず離れずの関係みたいでいいよね」

美奈は時にしんみりとした表情を浮かべる。

「美奈なんてベッタリのくせに」

「うるさいなぁっ」

旅行から帰った後に、美奈がしんみりとした理由に気付く事になる。

意地悪のお返しのつもりで『ベッタリ』と言い返したけれども、美奈の心に深く突き刺さる事なんて、今は考えてもみなかった。

私はは旅行の事で頭がいっぱいだったし、まさか美奈と湊君が今までの関係じゃなくなってるなんて思いもしなかったから。

喧嘩の後の旅行の事だって、美奈は嬉しそうに話してくれていたし、二人もいつも通りに見えていた。

知らなかったのは私だけだったと気付くのは旅行から帰った後の事。

とにかくアタシの頭の中は、今現在、旅行の事だけだった。

仕事が終わると荷物をアレコレとまとめて、明日の準備をする。

響に少しでも可愛いと思って貰えるように、明日の為に服も靴も新調。

仕事上、普段は塗れないマニキュアを塗ったりして準備で大忙し。

響が帰ってくる時間が遅くても、待っている時間はあっという間に過ぎた。

逆に足りないぐらい。

「響は荷物これだけ?」

「たかが一泊でお前が多すぎるんだろっ」

次の日の朝、旅行当日。

私の車に荷物を積みながら、荷物の多さを注意された。