風がびゅうと吹いて。
俺は自分の着ているダッフルコートを抱き締めた。


「――…ざっむい!だすげで…」

俺は大きな独り言。
吐く息も真っ白で、その息の暖かさにすがりたくなる。


夜空には、
俺の好きなオリオン座とお月様。

でも、今の俺は不機嫌。
ポケッ…と見上げて感傷に浸っている場合ではないのだ。


「…ちっくしょッ。あのババァ、覚えてろよッ…!いつか仕返ししてやるッ…」


寒さで鼻をすすりながら、ムスッとそう呟く俺の手には…
コンビニのレジ袋。

よりによって、
また『牛乳』1本…。

苦い想いが蘇るから止めて欲しいのに。



テストから解放されて、…と言っても、ろくに勉強なんてしなかったけど。

…とにかく、
上機嫌でテレビを見ていた俺に…、あの悪魔はこう言った。


『晃~、牛乳買ってきて?ね?お願い晃ちゃん。』

『――…はぁッ!?ヤダ!自分で行けよ!』

俺は勿論、反抗した。


『だって、もう夜の九時なんだもん。』

『…だからッ?』

『母さんが痴漢とかあっちゃったら大変でしょう?父さんも悲しむわよ~?』

……ないッ。
母さんに痴漢はないしッ。