母は泣いていた。
夕方,仕事から帰り,私の様子がおかしかったことに気づいた母は私を問い詰めた。
「病院から電話……お父さんが事故で運ばれたって……」
やっとの思いで母に伝えた。涙が止まらなかった。
怖かった。
母は顔色を変え,私を連れて病院へと急いだ。
病院へつくと,父のいるという病室へ案内された。
父の顔にはなぜか白い布が被せてあった。
後で教えて貰ったのだが,顔に白い布を被せるというのは死んだ人にすることらしい。
「なんでなの……」
私は母の泣いているところを初めて見た。
父にすがりついて泣いている母は私の知らない人だった。
