その時,
プルルルル…
と電話の音が異様に大きくリビングに響いた。
「びっくりした……。」
プルルルル…
私は進路方向をキッチンから廊下へと変更した。
プルルルル…
受話器をとり,ガチャっという音を聴きながら私は耳へと近づけた。
「もしもし,どちら様ですか。」
誰もいない廊下に,私の声が響く。
すると,私より何倍も大きな声で,
「佐藤次郎さんのご家族ですか。」
と,尋ねられた。
「はい,佐藤次郎は私のお父さんです。どちら様ですか。」
「桜ヶ丘病院のものです。佐藤次郎さんが事故に遭い,こちらに運ばれました。」
「え…。」
私はどういうことかすぐに理解ができなかった。
当然だ。私はまだ10歳になったばかりだった。
「もしもし。君,今1人?お母さんは?」
「お母さんは,今お仕事です。」
「そうか…じゃあ,お母さんに連絡は取れるかな?」
「できません!!!」
私は怖くなり,そう言い放つと電話を切った。
早く母に帰ってきて欲しかった。
それからすぐ,また電話が鳴った。
私は必死になって電話のコンセントを抜いた。
プツッ……
と音がしたきり,電話は鳴かなくなった。
