「それで? あなた達、リアンとどういう関係なの?」


 わたし達を先導しながら、女性が尋ねる。如何にも仕事ができる感じの無駄のない尋ね方で、なんとなく背筋が伸びた。


「僕はリアン様の身の回りのお世話をしています。麟族のニコラス様からリアン様を紹介していただきました」

「……あぁ、ちょこちょこリアンに会いに来る、あの派手な人ね。知ってるわ」


 女性はそう言ってクスクスと笑う。
 ロイが旦那様のところで働くことになった経緯は初耳だ。帰ったらもう少し詳しいことを聞いてみようなんて思いつつ、わたしも微笑む。


「それで、人間のお嬢ちゃん。あなたは?」

「あっ……えっと、わたしは森で魔族に襲われたところを、だ……リアン様に救っていただいて」

「へぇ……あのリアンがそんなことをねぇ」


 心底驚いた声音。少しだけムッとしてしまう。
 わたしにとっては旦那様はいつだって優しいし、正義感に溢れている方だ。だから、どうして女性が意外に思うのかよく分からない。


「――――それで、その時に両親が殺されてしまいまして。以降、リアン様がわたしをご自宅に置いてくださってるんです」


 その瞬間、女性は声も出さずに立ち止まった。急なことに戸惑い、わたしは女性にぶつかってしまう。慌てて「ごめんなさい」って言ったけど、女性には聞こえてないみたいだった。


「あ……あの…………」

「そう。そうなの」


 女性の声が微かに震えている。彼女の瞳は、金色の光を放って揺れていた。

 どうしよう……喉のあたりがモヤモヤする。

 この感覚をわたしは知っている。
 前世でわたしが旦那様と付き合って以降、女の子達から向けられた感情。それに伴うほろ苦い感覚だ。


(この人、旦那様のことが好きなんだ)


 そう思うだけで胸が軋む。
 上手に呼吸が出来なかった。