「アイリス様、こっちです! こっちからリアン様の匂いがします」


 ロイはそう言って、尻尾をブンブン振っている。二日ぶりに旦那様に会えることが嬉しくて堪らないらしい。ふふって笑いながら、わたしはロイの隣を歩いた。


(思ったよりも皆ちゃんとお休みしてるんだなぁ)


 静まり返った庁内を歩きながら、密かにそんなことを思う。
 エントランスは明るかったけど、人少なな庁内は薄暗くて、少し不気味だ。きっと普段は明るいんだろうけど、魔族はそれぞれが魔法を使えるし、最低限の灯りが確保できれば良いって考え方なんだと思う。ロイが使える魔法は限られてるし、わたし達は薄明りの中を進むしかない。


(なんというか、冒険のダンジョンみたいな感じ?)


 前世のわたしはあんまりゲームとかしなかったんだけど、弟がRPGをプレーしてる画面を見せてくれたことがあって、その時と絵面がとても似ている。言うならば、今すぐモンスターが現れて、わたしたちに襲い掛かってきそうな感じというか。本当に雰囲気満点だ。