「でもでも、いきなり行って旦那様の迷惑にならないかな? 寝る間も惜しんで仕事していらっしゃるのに」


 わたしには旦那様が今、どんな状況か分からない。もしも旦那様のお仕事の邪魔をしてしまって、嫌そうな顔をされてしまったらって思うと、少し怖い。旦那様はそんな人じゃないって分かってるけど、不安になってしまうのが乙女心って奴だと思う。


「……逆に、おまえが行ってやらないと、あいつはきっと不眠不休のままいつまでも働き続ける。昨日はニコラス、今日は俺をここに寄こした理由ぐらい、おまえにも分かるだろう?」


 アクセスの言葉に、胸が甘く疼く。


(そうだよね。アクセスの言う通りだ)


 この二日間、ニコラスやアクセスがわたしのところに来てくれた理由――――それは『旦那様が家に帰れない』って事実を伝えるためだけじゃない。
 わたしのことが心配だから。
 わたしのことを想ってくれているから、わざわざ二人にお願いしてくれたんだ。


「決めた! わたし、旦那様に会いに行きます!」


 立ち上がり、力強くそう宣言すると、アクセスは満足そうに頷いた。