アクセスに連れられてやってきたのは、近くにあるカフェだった。メルヘンチックな印象のお店で、パステルカラーで彩られた内装、給仕服に身を包んだ店員さん、メニューには物語のタイトルみたいな長い名前がついている。ロイみたいに、人の言葉を喋れる猫やウサギなんかも店員さんをしていて、癒しの空間って感じだ。


「アクセスの趣味?」


 尋ねたら、「悪いか?」って答えが返ってくる。何が悪いとでも言いたげな表情だ。


(そっか。好きなんだ……)


 心の中で呟きつつ、わたしはアクセスの視線の先を追う。
 彼は憮然とした表情でメニューを凝視していて、可愛い店員さんには見向きもしない。店員さんの方はアクセスのことをチラチラ見ているけど、どうやら女性からの視線には興味がないようだ。


「……言ってくださったら、家でもデザートを用意したのに」

「わざわざチビッ子の手を煩わせることは無い」


 そう口にしつつ、アクセスはスイーツのイラストを愛し気に撫でる。思わぬギャップに笑みが漏れた。

 注文を済ませてからも、アクセスの口数は少なかった。時々何とも言えない表情でわたしを見たり、店員の猫さんをモフモフして遊んでいる。

 アクセスはきっと、幼女を山車にしなくても、こういう場所に一人で来れるタイプだろう。だから、このお店に来ること自体が彼の本題ではない。けれど、ある程度食事が進むまで口を割る気はないらしいので、わたしは黙って従うことにした。